今回は、前回説明した続きで、円面距離と空間距離の決定方法について書いていきます。
1.円面距離及び空間を決める要素
沿面距離及び空間距離の値は、大きく下記6つの要素によって決められます。
1) 保護手段
2) 汚損度
3) 使用される電圧(製品の電源電圧、公称電源電圧)
4) 製品の材料
5) 製品の使用される高度、気圧
6) 過電圧カテゴリ
今回は、この中の使用される電圧と製品材料について書いていきます。
上記6つの内容の製品仕様から、下記表に当てはめることにより、それぞれ沿面距離、空間距離が求められます。
IEC60601-1の
・表12 患者保護手段を提供する最小沿面距離及び空間距離
・表13 電源部からの操作者保護手段を備える最小空間距離
・表14 公称電源電圧のピーク値を超えるピーク動作電圧での電源部絶縁の為の追加空間距離
・表15 二次回路での操作者保護手段の為の最小空間距離
・表16 操作者保護手段を提供する最小沿面距離
2. 使用される電圧についての説明
使用される電圧は、
・設計する製品が駆動する電源電圧
・ACアダプタなどを使用する場合は、その対象となる電源電圧
の2つがあります。
特に、ACアダプタを使用する場合は、販売を対象とする国によって、電源電圧が異なります。
参考:http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/orien-sougou/Book/orien-sougou-P1787.pdf
上記より、
日本の場合: Vr.m.s値 = 100V
Vpp(ピーク電圧) = 141V(√2 * 100)
Vpp(ピーク電圧) = 338V(√2 * 240)
です。
3. 製品の材料
・製品に使用される材料は、IEC60112によってグループ分けされます。
材料グループはIEC60112の材料試験データをもとに評価し確認する必要があります。
それによって、トラッキング指数が決定され、
・トラッキング指数が、600以上の場合は材料グループ1
・トラッキング指数が、400以上、600未満の場合は、材料グループ2
・トラッキング指数が、175以上、400未満の場合は、材料グループ3a
・トラッキング指数が、100以上175未満の場合は、材料グループ3b
になります。
もしも、材料グループが既知でない場合は、
材料グループのうち、一番厳しい、材料グループ3bを想定して設計します。
トラッキングとは:
絶縁物の表面での微小放電が繰り返されることによって、絶縁物表面に導電性の経路が生成され、絶縁破壊に至る現象の事です。
絶縁物のトラッキングの起こしやすさを示す値。 値が大きいほど、トラッキングを起こしにくい。
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