今回は、前回説明しました、沿面距離と空間距離の値の決め方について書いていきます。
1. 沿面距離及び空間距離を決める要素
沿面距離及び空間距離の値は、大きく下記6つの要素によって決められます。
1) 保護手段
2) 汚損度
3) 使用される電圧(製品の電源電圧、公称電源電圧)
4) 製品の材料
5) 製品の使用される高度、気圧
6) 過電圧カテゴリ
今回は、この中の保護手段と汚損度について説明します。
2. 保護手段についての復習
保護手段は、大きく2つに分かれています。
操作者保護手段(MOOP :Means of Operator Protection) :患者以外への電撃に起因するリスクを減らすための保護手段。
患者保護手段(MOPP:Means of Patient Protection) :患者への電撃に起因するリスクを減らすための保護手段。
3.保護レベル
規格によって、保護のレベルが規定されており、4段階になっています。
(1) 1MOOP:操作者保護のため、基礎絶縁を行う。
(2) 1MOPP:患者保護のため、基礎絶縁を行う。
(3) 2MOOP:操作者保護のため、強化絶縁又は、二重絶縁を行う。
(4) 2MOPP:患者保護のため、強化絶縁又は、二重絶縁を行う。
つまり、患者保護手段を構成する沿面距離及び、空間距離はその保護手段が1MOPPにあたるか、2MOPPにあたるのかにより、距離が定められているということです。(操作者保護手段も同様)
これらは、前に行った、製品が起こす可能性のある電撃の経路によって、保護手段のレベル(1MOOPなのか、1MOPPなのか、2MOOPなのか、2MOPPなのか)が規定されています。
2) 具体例:
・本体のSIP/SOP(PC通信部分)を通して医療用機器に、大きな電圧が加わり、プローブを通して、患者、操作者に電撃が加わる。
→SIP/SOPと、メイン回路を絶縁し、回路を通して、患者や、操作者に電撃が加わらないようにする。
→規格では、1MOPP(患者保護のため、基礎絶縁を行う事)の保護が求められている。
(今回は、電撃の経路に対し、どの程度の保護レベルが必要かは割愛する。 試験方法で別途説明予定)
4.汚損度についての説明
汚損度:機器が使用される空気中のほこりなどの汚染により、1~4段階に分類される。
つまり、想定される使用する環境の汚損度のレベル(1~4段階)に合わせて、沿面距離、空間距離が定められている。
汚損度1
ほこりや汚染物質が侵入せず、湿気も入ってこない状態。
例:容器で完全に密封された部分など
汚損度2
非導電性の汚染は発生するが、偶々結露によって一時的に、導電性の汚染が引き起こされることが予想される状態。
例:通常の室内環境など。乾いた埃により、湿度によってはその埃が導電性となる可能性がある。
汚損度3
導電性の汚染が発生する。又は、予想される結露のために導電性となる乾燥した非導電性の汚染が発生する状態。
例:工場などの環境で、湿気を含んだ埃や、工場機械の切削分等が想定される場合。
汚損度4
汚染が導電性の埃、又は雨もしくは雪などによって永続的な導電性を発生させる。
例:雨や雪などが降る屋外環境など。
以上になります。