IEC60601-1 保護手段(MOP)の説明2
電撃から操作者や患者を守る方法について説明する。
1. 前回の復習
前回 IEC60601-1 保護手段(MOP)の説明において、保護手段というものを理解するために、まず下記写真を具体例にとり電撃の通る経路について考えた。
その結果、下記8個の電撃の経路を考えた。
(1) 電源部分が壊れて、大きな電圧がACアダプタに加わり、患者、又は操作者に電撃が加わった時
(2) ACアダプタを使っていない時に、ACアダプタ接続部分に大きな電圧が本体に加わり、患者、又は操作者に電撃が加わった時
(3) 本体のビスなどの金属部分に、大きな電圧が加わり、医療用機器本体を通して、患者、又は操作者に電撃が加わった時
(4) 本体のSIP/SOP(PC通信部分)を通して医療用機器に、大きな電圧が加わり、患者、操作者に電撃が加わった時
(5) 他の機器が壊れるなどして、プローブに大きな電圧が加わり、外装から大地に電流が流れた時
(6) 他の機器が壊れるなどして、プローブに大きな電圧が加わり、本体のSIP/SOPからPCに電流が流れた時。
(7) ACアダプタに大きな電圧が加わり、PCを通して、操作者に電撃が加わる時
それに対し、今回は、電撃が操作者や患者に、どのようにしたら伝わらなくなるのか。
保護できるのかを考えていく。
2 考えられる経路のまとめとその対策
ここでは、経路に対して、どういう対策が考えられるかをまとめる。
(1-1) 経路:
大きな電圧がACアダプタのコンセントに加わり、患者、又は操作者に電撃が加わる。
(1-2) 対策:
ACアダプタの1次側回路と、2次側回路の間が絶縁してあり、IEC60601-1に規定されている電圧を超えても十分保護されているACアダプタを使う。
・IEC60601-1(今は4版)を通っているACアダプタを使う。
(ただ、IEC60601-1を通っていても、製品として問題がないか検証する必要がある。)
(2-1) 経路:
ACアダプタを使っていない時に、ACアダプタ接続部分に大きな電圧が本体に加わり、患者、又は操作者に電撃が加わる。
(2-2) 対策:
ACアダプタの接続部分に、大電流が流れたときの保護(例えばバリスタなどで、大きな電圧を装置のGNDに誘導するなど)を取り付ける。
(3-1) 経路:
本体のビスなどの金属部分に、大きな電圧が加わり、医療用機器本体を通して、患者、又は操作者に電撃が加わる。
(3-2) 対策:
ネジなどの金属部分と、回路の距離を離し、電気を通らないようにする。
・金属ではなく、樹脂ビスなどを使う。
・ネジとネジの間に樹脂を埋め、絶縁する。
(4-1) 経路:
本体のSIP/SOP(PC通信部分)を通して医療用機器に、大きな電圧が加わり、患者、操作者に電撃が加わる。
(4-2) 対策:
SIP/SOPと、メイン回路を絶縁し、回路を通して、患者や、操作者に電撃が加わらないようにする。
(5-1) 経路:
他の機器が壊れるなどして、プローブ先端に大きな電圧が加わり、外装から大地に電流が流れる。
(5-2) 対策:
・プローブ先端を絶縁する。
・外装を樹脂にし、絶縁する。
(今回はないが、保護接地のあるものは・保護接地する。)
(6-1) 経路:
他の機器が壊れるなどして、プローブに大きな電圧が加わり、本体のSIP/SOPからPCに電流が流れた時。
(6-2) 対策:
・プローブの先端を絶縁する。
・SIP/SOPと、メイン回路を絶縁する。
(7-1) 経路:
ACアダプタに大きな電圧が加わり、PCを通して、操作者に電撃が加わる。
(7-2)対策:
・SIP/SOPと、メイン回路を絶縁する。
・IEC60601-1(今は4版)を通っているACアダプタを使う。
などが考えられる。
以上をまとめると、
今回患者及び、操作者に電撃が危険を及ぼす経路を考え、その対策案を考えた。
これらをまとめて考えた結果
・操作者及び、患者を電撃から保護するためには、どうしたらよいと言えるか。
(保護手段とはどうすればいいのか?)
それは、
電撃が通る経路に対して、
・絶縁によって、電撃が起こらないようにする。
・接地して、電撃が起こった時に、大地に流すことにより、患者及び操作者に影響がないようにする。
以上のようにすることにより、患者を保護することができると考えられる。
これが保護手段である。